高齢者事故の2大原因「身体機能低下」「認知機能低下」を分かりやすく解説
高齢ドライバーが引き起こした死亡事故のニュースが、メディアを賑わすことも多い昨今、ご自身が高齢だったり、高齢の家族がいたりすると、他人事とは思えないのではないでしょうか。
実際に、人の命に関わるような大きな事故が起これば、被害者とその家族だけでなく、加害者とその家族の人生も大きく変わってしまう恐れがあります。
警視庁の調べによると、事故全体に占める高齢者ドライバーの事故率が年々増加しているというデータもあります。
高齢者の事故が多い原因は加齢による様々な機能低下が指摘されています。特に「身体機能低下」「認知機能低下」は主要な原因であると言われています。
この記事では、その2大原因について分かりやすく解説します。また、高齢者の事故を未然に防ぐための対策についてもご説明します。
目次
高齢者の交通事故原因
上の図のように警視庁の調べによると、高齢者が起こした交通事故の違反行為は、「安全不確認(構成率約38.1%)」が最も多いという結果になっています。
また、高齢ドライバーが引き起こした交通事故の人的要因を見てみると、
・脇見や考え事をしていたことなどによる、発見の遅れ(構成率約81.5%)
・判断の誤り等(構成率約10.2%)
・操作上の誤り(構成率約7.9%)
というように、注意力や集中力の低下により、瞬間的な判断ができていないことがわかります。
この結果から、高齢ドライバーの多くは「認知機能の低下」がうかがえるほか、加齢による視力や聴力の衰えなど「身体的機能の低下」も疑われます。
【参考】:防ごう!高齢者の交通事故! 警視庁
高齢者の事故のそもそもの原因は2つ!「身体機能低下」「認知機能低下」
高齢ドライバーが事故を起こす原因は、大きく「身体機能低下」「認知機能低下」の2つだと考えられています。
身体機能や認知機能の低下とは、どのようなもので、それぞれ何が要因で引き起こされるのか、それらが運転に与える悪影響について解説します。
身体機能の低下とは?
高齢になると、視覚や聴覚機能、筋力が低下したり、身体や関節の柔軟性が損なわれたりするなど、身体機能の低下が見られるようになります。
これらはどれも運転操作や運転中の判断に大きな影響を及ぼすと考えられています。
高齢者の身体機能低下の原因
高齢者の身体機能の低下は、加齢によって起こる「低栄養」が主な原因です。低栄養となる主な原因は、単純に食べる量が減ることにあります。
高齢になると、一般的に「歯周病の進行や歯の残存数の減少」「かみ合わせの悪化などによる咀嚼機能の低下」「舌の動きや飲み込む力が弱くなる嚥下機能の低下」により、小食や偏食になります。
さらに、加齢による筋力の低下、筋肉量の減少から身体活動力が減り、食欲が減退します。これらの要因が、食欲の減退→低栄養→身体機能の低下、という悪循環を生み出します。
身体機能が低下すると運転にどう影響するの?
身体機能が低下すると運転にどんな影響を与えるのか?運転に特に大きな影響を及ぼす、視覚、聴覚、関節の硬化に関して解説します。
視覚機能の低下
視覚機能には、「動体視力」「夜間視力」「静止視力」などがありますが、これらの機能が低下すると、交通状況の変化を正確に視認できない、道路標識や交通表示を見落としたり見間違える、などのミスが生じます。
また、視野が狭くなるため、追い越しや車線変更時に適正な判断ができない、歩行者や周囲の車の接近に気付くのが遅れる、などの恐れもあります。
運転中は目から入ってくる情報が一番の手がかりになるので、視覚機能が低下するということは、運転操作のミスにつながりやすくなります。
聴覚の低下
聴覚が低下するということは周囲の音が聞こえづらくなります。「踏切の遮断機の音」「緊急車両のサイレン音」「周囲の車のクラクションの音」など、運転の手がかりになる音が聞こえにくくなります。
聴覚が低下することにより、音を聞き逃す、音に気付くタイミングが遅れるため、その分、危険を回避する行動を起こすまでに時間を要します。
身体や関節の硬化
高齢者がブレーキとアクセルを踏み間違える要因の一つに、身体や関節の硬化があると言われています。
高齢になると、大腿部の開き具合が若い人に比べて大きい、足先の向きが外側に開きやすい傾向にあります。わかりやすく言うと、足を広げてがに股にした状態で運転席に座っていることになります。
この状態で、後方確認したり、バックする際に右後方に身体をひねると、自然と右足も、右側のアクセルペダルの方にずれます。
再度、前に向き直ったとき、身体や股関節が固くなっている高齢者だと、右足がアクセルペダルにずれたまま戻らないことが多く、ここでブレーキだと勘違いし、アクセルを踏み込んでしまう事故が多く起こっています。
認知機能低下とは?
認知機能低下とは、理解力や判断力、記憶力や言語理解能力など、認知機能に係る能力が低下することです。
運転中は、認知と判断を脳内で繰り返しているので、認知機能は運転には欠かせない能力ということが言えます。
高齢者の認知機能低下の原因
認知機能の低下は加齢によって起こります。高齢者の場合、脳内での処理速度が加齢によって低下するため、運転中に入ってくる多くの情報を処理したり、瞬時に判断したりすることが苦手になります。
この認知機能の低下がひどく、日常生活に影響を及ぼす状態が6ヶ月以上続いている状態が「認知症」になります。
認知機能が低下すると運転にどう影響するの?
運転中は、信号の色、交通標識、周囲の車の動き、歩行者、自転車、道路状況など、自身の車をとりまく状況が刻々と変化します。走行しながら、それらを確認し適切な判断を下していく必要があります。
この時、人の脳は「認知」「判断」を繰り返し、まさに認知機能をフルに使っている状態になります。
認知機能が低下した高齢者が運転をすると、歩行者や周囲の車に気付いても、「対処するタイミングが遅れる」「ブレーキをかけるべきところをとっさにハンドルをきってしまう」などのミスが生じる恐れがあります。
警視庁の調べによると、2017年に死亡事故を起こした75歳以上の高齢ドライバーの約半数が、直近の認知機能検査で、「認知症」または「認知機能低下」のおそれがあると判定されています。
高齢者の事故を未然に防ぐには
身体機能や認知機能が低下した高齢者が、事故を起こさずに安全に運転するためには、どのような心がけや対策が必要でしょうか。
長時間運転をしない
長時間運転を続けると、身体的にも、精神的にも疲労を感じます。疲れると、若いドライバーでも認知力、判断力が鈍り、反応速度も遅くなります。また、疲れによるイライラから運転が荒くなることも考えられます。
そもそも、身体機能や認知機能が低く、反応速度が遅い高齢者が、長時間運転を続けることで、判断力はさらに鈍り、反応速度が遅くなることが予想されるため、運転するには危険な状態になります。
無理に長時間運転せずに、休憩を取りながら走行する必要があります。
高速道路、幹線道路での運転は極力避ける
高速道路はスピードが出る分、一般道よりもさらに早い、認知・判断・反応が求められます。
また、幹線道路も同じくスピードが出ます。しかも、3車線以上ある道も珍しくなく、右左折専用レーンがある場合も多いので、車線変更をしなければならない状況に何度も遭遇します。
高速道路や幹線道路の運転は、スピードに対応できる判断力、タイミングを見計らって車線変更する運転技術などが問われます。運転に不安がある高齢者の方はなるべく避けたほうが良い道路と言えるでしょう。
安全装置付きの車に乗る
最近では、下記のような安全装置を搭載した車が数多く発売されています。
・衝突を回避する
・アクセルの踏み間違いによる急発進を防ぐ
・車線からはみ出さないように走行をサポートする
・前の車両と適正な距離を保ち走行する
・車両のふらつきや車線からのはみ出しを知らせてくれる
安全装置付きの車は、100%事故を防いでくれるわけではありませんが、事故を起こす心配が軽減され、安心して運転できるようになります。
身体的な衰えを感じたり、若いころのようにスマートに運転できなくなったと感じたりしたら、安全装置搭載の車に乗り換えてみてはいかがでしょうか。
自信を無くしたら免許返納を検討する
高齢ドライバーが起こした自動車事故のニュースを見て心配になった、実際に自分もあと一歩で大事故を起こしそうになったことがある、などという方は、免許返納のタイミングなのかも知れません。
車がないと「行動範囲がいっきに狭くなってしまう」「移動手段がなくなってしまう」など、不便さを感じて免許を手放せない方は多いと思います。
しかし、事故を起こして誰かの命を奪ってしまう危険を考えると、いずれ免許返納を検討しなければならない時期がやってくるはずです。
高齢のご家族がいる方の中には、親に免許返納を勧めることを考えている方もいるでしょう。本人にはなかなか言いづらいことですが、親の運転に不安を感じたら、プライドを傷つけないように言葉を上手に選んで話してみることです。
まとめ
高齢になると、運転に必要な機能が低下してしまうことが分かりました。安全装置を搭載した車に乗れば大丈夫なうちはいいですが、もしも危ない運転をするようになってきたのであれば、大きな事故を起こす前に免許返納をするのが望ましいです。
免許返納時は、ご家族など身近な方がサポートし、免許返納後も送迎を引き受けるなどの力添えも必要です。高齢者の事故を無くすということはは、これまで以上に家族のサポートが必要であることを自覚しなくてはならないでしょう。
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