Q. 後遺症がのこった場合の慰謝料について教えてください。
●後遺症がのこるかも知れない
交通事故で傷害を負った場合に、最終的にこれ以上治療のしようがない状態になることがあります(「症状が固定された」という)。
典型的には手足の切断や失明などがそれに当たりますが、そのほかにもいわゆる「むち打ち症」によって頭痛や吐き気、めまいがずっと収まらない場合が後遺症に該当します。
後遺症がのこるようなことは起こってほしくないものですが、仮に後遺症がのこった場合には、症状固定までの部分の賠償(傷害についての治療費と慰謝料)とは別に、後遺障害についての賠償を求めることができます。
具体的には、運動機能を喪失した場合など労働能力が失われた割合に応じた逸失利益と、後遺症による精神的損害の賠償(慰謝料)とがそれに当たります。
●自賠責による基準
自賠責では、後遺症(後遺障害)に関する慰謝料の額について細かな基準が定められています。
これによれば、後遺障害の程度に応じて1級から14級までの認定基準が定められ、それに応じた保険金額が決められています。
最も軽い14級では32万円、最も重い1級では1100万円と決められており、等級以外の個別的な事情によって増減されることはありません。
自賠責というのは交通事故の被害者の救済のために加害者との交渉をまたずに賠償金の支払いを受けられるようにするための制度だからです。
●任意保険で支払われる慰謝料
任意保険では、保険会社によって若干の差はありますが、自賠責の基準によるよりも少し高い慰謝料が支払われます。
保険会社が入って示談をする場合には、ほとんどのケースでこの基準と大差ない額となっています。
本来は保険では法律上の賠償金が支払われるというのがタテマエですが、実際には自賠責の基準より少し高い程度の額にとどまっており、次に示す裁判所の基準に比べれば半分かそれ以下の額となっているのが現状です。
●裁判所・弁護士会の基準
最終的に裁判となった場合には、被害者の様々な個別の事情を考慮して慰謝料の額が決められることになります。
とは言っても、後遺障害に対する慰謝料については公平の観点から、自賠責の等級ごとに裁判例での大体の相場が決まっています。
裁判例での後遺症慰謝料の相場を整理分析して弁護士会がまとめた本が出版されています(通称『赤い本』『青い本』という2つがある)。
これによれば、自賠責の場合と比較して2倍から3倍程度の額が基準となっています。
裁判を起こさない場合であっても、保険会社との交渉を弁護士に依頼した場合にはこの基準を前提とした交渉が行われますから、弁護士が付かないで示談をするよりも多くの慰謝料が支払われることが多いです。
●弁護士に交渉を依頼するために
上で述べたように、自賠責は被害者の救済のために加害者との交渉をせずに一定額の賠償を受けられるようにする制度です。
ここで支払われた保険金をもとに弁護士に相談をして本格的な賠償の請求にのぞむというのが一般的です。