Q. 示談が成立した後に後遺症が発生した場合は追加で賠償請求できますか?
●示談が成立した後に発生した後遺症
後遺症の症状が、示談が成立した後に出てくることがしばしばあります。
このような場合、示談がすでに既に成立してしまっているから仕方がない……として賠償請求をあきらめてしまうことがあります。
示談書には必ず「本示談書に記載された事項以外には一切の債権債務のないことを確認する」とか「今後なんらの請求をしない」といった文言が記載されていますので、そのように考えてしまうのも無理のないことかも知れません。
しかし、後遺症が発覚したのが示談の成立後であった場合には、示談の後に後遺症についての賠償請求をすることが可能です。
●示談の成立の意味
交通事故による賠償問題について当事者間で話し合うことを示談といいますが、これは法律的には「和解」契約に分類されます。
和解契約は、一旦成立した後はその内容を覆せないのが原則です。
争いを終わらせるための和解契約であるのにその内容を後から争うことができるとすれば意味がなくなってしまうからです。
例えば、本来500万円を請求できる被害の状況であっても300万円で示談が成立すれば、300万円の請求しか受けられなくなり、差額の200万円は権利を放棄したものと扱われます。
しかしこれには例外があります。
●示談のときに後遺症の発症が予想できなければ請求できる
ごくごく簡単に言えば、示談(和解契約)においては、契約の時点で予想(法律的には予見といいます)できた範囲にしか契約の効果が及ばないということです。
特に最近の判例はこの点について被害者にかなり有利な判断をしています。
したがって、示談の成立後に発症した後遺症については、示談による賠償金とは別に改めて請求することができるというのが基本的な考え方になります。
●後遺症が出るかどうか分からない
上で述べたように、後遺症が後から発生した場合にはその部分の賠償請求をすることができます。
したがって、後遺症が出るかどうか分からない場合であっても、示談そのものは行ってよいといえます。
むしろ、治療費・通院費などを最初に請求しておきたいという現実的な必要性もあるでしょう。
もっともそのような場合、後遺症が後から発生した場合には別途請求することができるという趣旨の文言を示談書に追加しておくことができれば安心です。
その上で、実際に後遺症の発症が分かった場合、時間を空けずに賠償請求をすること、交通事故が原因で発生した症状である点を証明することが大切となります。