耳の後遺障害の慰謝料相場とは

交通事故によって耳に大きな負担がかかると、交通事故後、耳に後遺障害が残ることがあります。耳の後遺障害が残ると、日常生活や仕事に大きな支障を背負う可能性があります。

交通事故で耳に後遺障害が残るケースには、どのような場合があるのでしょうか?

今回は、耳の後遺障害の内容や種類、耳の後遺障害が認められた場合の慰謝料や賠償金について解説します。

1.耳の後遺障害の種類

交通事故による耳の後遺障害には、大きく分けて耳の欠損、聴力障害、その他の障害があります。

耳の欠損とは、耳の外側の耳介(じかい)の部分が物理的に欠損する場合です。耳介とは、動物の耳の外側の耳殻(じかく)のことです。この耳殻の軟骨が大きく欠損したら、後遺障害が認定されます。

聴力障害とは、交通事故によって聴力が低下した場合に認められます。両耳の聴力が失われたり低下したりした場合、片耳の聴力が失われたり低下したりしたケースで認められます。

その他の後遺障害とは、耳鳴りがしたり耳漏が起こったりするケースです。以下で、それぞれについてのケースを見てみましょう。

2.耳の欠損障害

まずは、耳の欠損障害のケースを見てみましょう。これは、耳の外側の耳介の軟骨が2分の1以上なくなる場合です。

後遺障害の等級として明示されているのは、後遺障害12級のみですが、両耳の耳介が欠損した場合には、併合認定されて等級が上がります。

また、耳介が欠損した場合には、同時に外貌醜状の後遺障害が認められるケースもあります。その場合には、耳介の欠損または外貌醜状のうち、高い方の等級の後遺障害が認定されます。

さらに、耳介の2分の1が欠損しない場合でも、外貌醜状として後遺障害の認定を受けられるケースがあります。その場合には外貌の醜状を残すものとして、後遺障害12級14号になります。

耳介の欠損障害
後遺障害等級 後遺障害の内容
第12級4号 1耳の耳殻(耳介)の大部分を欠損したもの

3.聴力障害

次に、聴力障害のケースを見てみましょう。聴力障害とは、事故の影響で聴力が失われたり低下したりするケースですが、完全に聴力が失われたのか、聴力が残っているとしたらどの程度失われたのかによって、後遺障害の等級が異なります。

また、両耳の聴力が失われると片耳のケースより後遺障害の等級が上がります。まずは、両耳の聴力障害が残るケースについて、表にまとめたので、見てみましょう。

(1)両耳に聴力障害が残るケース

後遺障害等級 後遺障害の内容
第4級3号 両耳の聴力を全く失ったもの
第6級3号 両耳の聴力が、耳に接しなければ大声を解することができない程度になった
第6級4号 1つの耳の聴力を完全に失い、他の耳の聴力が40センチメートル以上の距離からでは普通の話し声を解することができない程度になった
第7級2号 両耳の聴力が、40センチメートル以上の距離からでは普通の話し声を解するこ とができない程度になった
第7級3号 1つの耳の聴力を完全に失い、他の耳の聴力が1メートル以上の距離になると普通の 話し声を解することができない程度になったもの
第9級7号 両耳の聴力が1メートル以上の距離からでは普通の話し声を解することができ ない程度になった
第9級8号 1つの耳の聴力が、耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、かつ他方の耳の聴力が1メートル以上の距離からでは普通の話声を解することが困難になった
第10級5号 両耳の聴力が、1メートル以上の距離からでは普通の話し声を解することが困難 になった
第11級5号 両耳の聴力が、1メートル以上の距離からでは小声を解することができない程度になった

このように、聴力障害については、かなり細かく聴力の程度に応じて分類されています。

聴力障害が起こっているかどうかについては、「純音聴力検査」と「語音聴力検査」という2つの検査方法を用いて調べます。

「純音聴力検査」は、単一の周波数の音を聞く力を調べる検査方法です。聴力の程度は「dB」で評価されます。

「語音聴力検査」は、日常的な話し声の音を聞き取る検査方法です。話し声の聞こえ方によって聴力が評価されます。検査結果は「明瞭度」の%によって表記されます。

4級3号

最も重い4級3号は、「両耳の聴力を全く失ったもの」です。これは、両耳の平均純音聴力が90dB以上になっているか、両耳の平均純音聴力が80dB以上でかつ、最高の明瞭度が30%以下になった場合です。

6級3号、4号

次に重い6級3号は、「両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの」です。これは、両耳の平均純音聴力が80dB以上になっているか、両耳の平均純音聴力が50dB以上80dB未満で、かつ、最高の明瞭度が30%以下になったケースです。

6級4号は、「1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」です。これは、1つの耳の平均純音聴力が90dB以上で、かつ他方の耳の平均純音聴力が70dB以上になった場合です。

7級2号、3号

7級2号は、「両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」です。これは、両耳の平均純音聴力が70dB以上になっているか、両耳の平均純音聴力が50dB以上となり、かつ、最高の明瞭度が50%以下になったケースです。

7級3号は、「1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」です。これは、1つの耳の平均純音聴力が90dB以上となり、かつ、他方の耳の平均純音聴力が60dB以上になったケースです。

9級7号、8号

9級7号は、「両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」です。これは、両耳の平均純音聴力レベルが60dB以上となった場合、または両耳の平均純音聴力が50dB以上となって、かつ、最高の明瞭度が70%以下になったケースです。

9級8号は、「1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの」です。これは、1つの耳の平均純音聴力が80dB以上となり、かつ、他方の耳の平均純音聴力が50dB以上になった場合です。

10級5号

10級5号は、「両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの」です。これは、両方の耳の平均純音聴力が50dB以上になったか、または、両方の耳の平均純音聴力が40dB以上で、かつ、最高の明瞭度が70%以下になったケースです。

11級5号

11級5号は、「両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの」です。これは、両耳の平均純音聴力が40dB以上になった場合に認定されます。

(2)片耳に聴力障害が残るケース

次に、片耳の聴力障害のケースを見てみましょう。

片耳の聴力障害
後遺障害等級 後遺障害の症状
第9級9号 1つの耳の聴力を全く失ったもの
第10級6号 1つの耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
第11級6号 1つの耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
第14級3号 1つの耳の聴力が1メートル以上の距離からでは小声を解することができない程 度になったもの
9級9号

9級9号は「1耳の聴力を全く失ったもの」です。これは、片一方の耳の平均純音聴力が90dB以上になったケースです。

10級6号

10級6号は「1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの」です。これは、片方の耳の平均純音聴力が80dB以上90dB未満になった場合に認められます。

11級6号

11級6号は、「1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」です。これは、1つの耳の平均純音聴力が70dB以上80dB未満になったケースか、1つの耳の平均純音聴力が50dB以上となり、かつ最高の明瞭度が50%以下になったケースで認められます。

14級3号

14級3号は、「1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの」です。これは、1つの耳の平均純音聴力が40dB以上70dB未満になった場合に認められます。

4.耳鳴り、耳漏のケース

最後に、耳鳴りや耳漏などの後遺障害が残ったケースを見てみましょう。

まず、耳漏とは、耳の外傷によって膿が出る症状です。そこで、手術による治療を行った上で、それでもなお耳漏が続く場合に後遺障害が認定されます。

耳鳴りは、ピッチマッチ検査やラウドネスバランス検査などの検査結果によって耳鳴りが常時起こっていると言える場合、または検査結果によっては明らかにならなくても、医学的な見地から合理的に耳鳴りを説明出来るケースにおいて、認められます。

耳鳴りが常時あるという場合、昼間などで、他にいろいろな音があるときには自覚がなくても、静かになったら耳鳴りの自覚症状が現れるケースを含みます。

医学的な見地から合理的に耳鳴りを説明出来る場合としては、耳の外傷や騒音の被害状況によって耳鳴りを合理的に説明できるケースなどがあります。耳漏や耳鳴りで認められる後遺障害の等級は、以下の通りです。

12級 常時耳漏があるもの
14級 常時ではないが、耳漏れがあるもの
12級 検査によって、耳鳴が常時あると評価できるもの
14級 耳鳴りがあると合理的に説明出来るもの

5.耳の後遺障害がある場合に請求できる賠償金

耳の後遺障害が残った場合、どのような賠償金支払いを請求出来るのでしょうか?

交通事故で後遺障害が残ると、認定された後遺障害の等級によって、後遺障害慰謝料と逸失利益を請求することができます。

以下では、それぞれについてご説明します。

(1)後遺障害慰謝料

まずは、後遺障害慰謝料を見てみましょう。後遺障害慰謝料とは、交通事故で後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料のことです。

後遺障害慰謝料の金額は、認定を受けられる後遺障害の等級によって大きく異なり、後遺障害の等級が上がるほど金額が上がります。

耳の後遺障害が残る場合の後遺障害慰謝料の金額は、以下の通りです。

等級 弁護士・裁判基準
第4級 1670万円
第6級 1180万円
第7級 1000万円
第9級 690万円
第10級 550万円
第11級 420万円
第12級 290万円
第14級 110万円

上記のように、最も重い聴力障害のケースでは、後遺障害慰謝料が1670万円となります。

ただし、上記の金額は、後遺障害慰謝料が高額になる弁護士・裁判基準で計算した場合のものです。

被害者が自分で相手の任意保険会社と示談交渉をした場合には、低額な任意保険基準や自賠責保険基準を適用されるので、上記の金額よりは大幅に下がってしまいます。

後遺障害慰謝料をなるべく多額にしたい場合には、弁護士に示談交渉を依頼する必要があります。

(2)逸失利益

次に、逸失利益を見てみましょう。逸失利益とは、後遺障害が残ってしまったために労働能力が低下してそれまでのようには働けなくなったために得られなくなってしまった将来の収入のことです。

各後遺障害の等級によって労働能力喪失率が定められていて、等級が高くなると労働能力喪失率は上がります。

耳の後遺障害の場合の労働能力喪失率は、以下の通りとなります。

等級 労働能力喪失率
第4級 92%
第6級 67%
第7級 56%
第9級 35%
第10級 27%
第11級 20%
第12級 14%
第14級 5%

たとえば、耳の後遺障害でも最も重い等級である4級が認められたら、92%もの労働能力喪失率が認められます。この場合、事故前の収入や事故時の年齢にもよりますが、1億円に近い高額な逸失利益が認められる可能性も十分にあります。

以上のように、耳の後遺障害が残った場合には、内容や程度にもよりますが、かなり高額な後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができる可能性があります。

まとめ

耳の後遺障害が残った場合になるべく高額な賠償金の支払いを受けるためには、弁護士に示談交渉や後遺障害等級認定の手続きを依頼することが重要です。

後遺障害の等級認定を確実に受けるためには、被害者が自分で等級認定申請をする被害者請求を行うべきですが、被害者請求は、かなり専門的な手続きなので、適切にすすめるためには専門家の助けが必要です。

また、後遺障害等級認定は、医学的な知識も必要となるので、素人が手続きすると失敗することもあります。

さらに、示談交渉の場面でも弁護士に依頼することが重要です。弁護士に依頼すると、当然に高額な弁護士・裁判基準を適用して賠償金を計算してくれるので慰謝料を含む賠償金の金額が上がりますが、被害者が自分で手続きをすると、低額な任意保険基準を適用されてしまうので、賠償金が少なくなってしまうからです。

弁護士に示談交渉を依頼すると、請求できる賠償金の金額が一気に2倍、3倍になることも普通にあります。耳の後遺障害が残った場合、それまでのように自由に生活ができず、大きなストレスを抱えることになります。

そのような中で、適切に賠償金の支払いを受けるためには弁護士に相談する必要性が高いです。今、交通事故による耳の障害が残って悩んでいる方は、相手との示談交渉を進める前に、早い段階で、一度交通事故問題に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。

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