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更新日:2020/07/23
公開日:2020/04/20

交通事故の損益相殺とは?控除される対象をわかりやすく解説

交通事故の被害者は、加害者側に対して損害賠償を請求することが可能です。ただし、加害者から支払われる損害賠償金は、あくまで被害者が被った損害を補填するためのものであるため、必要以上に被害者が利益を得ることは認められていません。

そのような場合「損益相殺」が行われることになりますが、適切な損益相殺が行われないと被害者が本来もらえるはずの損害賠償金以上の控除(差し引き)がなされてしまいます。

被害者がそのような事態に陥らないためにも、「損益相殺」について理解することはとても重要です。

この記事では、

・損益相殺の基礎知識
・「損益相殺」と「過失相殺」の違い
・損益相殺の例

以上3点を重点的にわかりやすく解説しています。

損益相殺について疑問やお悩みを持たれている方の参考になれば幸いです。

損益相殺とは?

「損益相殺」とは、わかりやすくいうと損害賠償金の「二重取りを防ぐ」ための制度です。交通事故の被害者は、加害者に対し損害賠償金を請求することができます。

しかし損害賠償とは、あくまで被害者が被った損害額に対する賠償です。そのため被害者は、交通事故で被った損害以上の余分な利益を受け取ることは認められていないのです。

たとえば、交通事故の被害者が怪我の治療中に労災保険などからすでに治療費などの支給を受けているとします。この場合、完治後に加害者と行うことになる示談交渉において、さらに治療費を請求してしうと、被害者は必要以上の利益を得ることになってしまいます。

そのような場合に、すでに被害者がもらっている金額分を差し引いて(控除して)請求することになります。

わかりやすく式に表すと以下のようになります。

(実際に支払われる損害賠償額)=(損害額)ー(損益相殺)

以上が損益相殺のしくみです。

損益相殺の注意点

補足になりますが、損益相殺は法律の条文で明確に定められたルールではなく、「損害の公平な分担」という理念に基づいて、一定の場合に認められている手続きとされています。

そのため、損益相殺をするのか、しないのかといった可否は裁判で争いになることも多いため、一概に「この賠償金は控除される・されない」と言い切れないことは覚えておいてください。

「損益相殺」と「過失相殺」の関係

損益相殺と似た手続きのひとつに、「過失相殺」というものがあります。

損益相殺と過失相殺は、どちらも損害賠償額を調整するための手続きではありますが、この2つは全く別の手続きであるため、それぞれを分けて考える必要があるため注意しましょう。

損益相殺と過失相殺の違い

「損益相殺」とは、先述したとおり被害者が損害賠償にて必要以上の利益を得ないように損害賠償を控除し調整するものです。一方で「過失相殺」とは、交通事故の被害者が加害者側に損害賠償請求を行う際に、賠償金額から被害者の過失割合分を減額することを指します。

例えば100万円の損害賠償金を被害者が受け取れると仮定します。ただし、その事故では被害者にも少なからず事故の責任(過失)があるとされ、被害者は3割の過失を負うことになったとします。

この場合に、被害者が受け取れる金額は、被害者の過失割合分である「3割」を差し引いた70万円となります。このように、「損害賠償金から過失割合を減額すること」を過失相殺といいます。

過失相殺の詳しい解説は以下の記事をご参考ください。

交通事故の過失相殺とは?損害賠償で損をしないための対処法を解説

損益相殺は過失相殺の前か後どちらにすべきか

損害賠償金を算定する際に、損益相殺と過失相殺のどちらを先に行うべきかという議論があります。

結論から申し上げると、過失相殺をしたあとの損害額から、損益相殺の対象となるものを控除する考えが法律の実務ではとられています(平成元年4月最高裁判決)。なぜこの前後が問題になるかというと、損益相殺と過失相殺を行う順番の違いによって、受け取れる損害賠償金に違いが生じてしまうためです。

以下は2つの方法を、過失割合を被害者2割と仮定して計算式にして表したものですので参考にしてください。

過失相殺の後に損益相殺を行う場合】

損害賠償額=総賠償額×(1−0.2)−損益相殺

【過失相殺の前に損益相殺を行う場合】

損害賠償額=(総賠償額−損益相殺居)×(1−0.2)

もし、加害者側に提示された損害賠償額に疑問がある場合には、自分でこの計算式にあてはめて計算してみると良いでしょう。

損益相殺の控除対象

被害者が請求できる損害賠償の項目には、損益相殺の対象となるものとならないものがあります。

もし、損益相殺の対象にならないにもかかわらず、加害者側から「この項目は対象になるため控除する」と提示されることが稀にあります。そのような場合には、以下に記載した損益相殺の可否リストを参考に確認してください。

なお、以下に記載したものはあくまで基準ですので、判例によって見解が分かれているものも存在するため注意しましょう。自分ではわからない場合には、弁護士に確認を依頼することも検討してください。

損益相殺の控除対象になるもの

損益相殺の控除の対象となるものには、主に以下のものがあります。

・明らかに高額だとわかる香典や見舞金
・労災保険から支払われる保険給付
・健康保険・国民健康保険などの公的医療保険制度による給付
・国民年金・厚生年金・公的共済年金等の公的年金制度による給付
・介護保険給付
・自賠責保険から被害者の直接請求にて支払われた損害賠償金
・政府補償事業による給付金
・任意保険から被害者の直接請求によって支払われた保険金
・無保険傷害保険により支払われる保険金
・人身傷害保険により支払われる保険金
・所得補償保険による保険金の支払い

損益相殺の控除対象とならないもの

損益相殺の控除の対象とならないものには、主に以下のものがあります。

・加害者が支払った香典や見舞金
・社会復帰促進事業等からの特別支給金
・自動車事故対策機構による介護料の給付
・搭乗者傷害保険
・自損事故保険
・生命保険による死亡・傷害・入院給付金
・損害保険による傷害保険・医療保険金
・生活保護法による給付
・雇用保険からの給付
・障害者福祉制度による給付
・死亡した幼児・児童などの教育費・養育費
・税金

損益相殺の例

損益相殺の対象となるのかならないのか、という議論の中でしばし問題になるものに「養育費」「生命保険」「労災保険」があげられます。

以下で「養育費」「生命保険」「労災保険」の3つの損益相殺の可否を解説します。

養育費は損益相殺の対象にはならない

幼児が死亡した際には、養育費が損益相殺の対象に当たるかどうかが問題になります。結論から申し上げると、養育費は損益相殺の対象にはなりません。幼児が生存していれば、当然ながら教育費や養育費がかかります。

しかし、幼児が亡くなった場合には、保護者は将来的に養育費を払う必要がなくなります。そのため、養育費を損益相殺の対象とするかどうかについて、かねてから論争がありました。

この点について、最高裁は2度にわたり養育費は損益相殺の対象には当たらない旨の判決を出しています(昭和39年6月24日、昭和53年10月20日)。このうち、昭和53年の判決は、損益相殺への直接的な言及というよりも、「幼児の逸失利益の算定においては、養育費を控除すべきではない」旨の内容でした。

したがって養育費は損益控除の対象とはなりません。

生命保険は損益相殺の対象にはならない

交通事故の被害者が死亡した場合、生命保険金は相続人が受け取ることになります。この相続人が受け取る生命保険金は、損益相殺の対象とはならないとされています。

なぜなら、生命保険金は、被害者が払込をした生命保険料の対価として支払われるものであり、交通事故とは関係なく被保険者が死亡したという事実をもとに支払われるためです。補足となりますが、生命保険が損益相殺の対象とならないことを裏付けるものとして、昭和39年の最高裁判決をあげることができます。

以下が判決条文です。

「保険契約に基づいて給付される保険金は、すでに払い込んだ保険料の対価たる性質を有し、もともと不法行為の原因と関係なく支払われるべきものであるから、たまたま本件事故のように不法行為による被保険者が死亡したためにその相続人たる被上告人両名に保険金の給付がされたとしても、これを不法行為による損害賠償金から控除すべきいわれはない。」(昭和39年9月25日 最高裁)。

労災保険は損益相殺の対象となる

交通事故はプライベートの時間だけではなく、仕事中に被害に遭ってしまう場合もあります。もし、業務上の原因から交通事故の被害に遭ってしまった場合、被害者は労災保険から必要な保険給付を受け取ることができます。

このような場合に、被害者が労災保険からこのような給付を受けると、受けた保険料から損益相殺がなされます。したがって、損益相殺を受けた分の損害については、加害者へ賠償請求を行うことはできません。加害者に請求できる損害賠償額は、総損害額から労災保険によって給付されたものを控除した額となります。

補足となりますが、労災保険が行う給付には以下のようなものがあります。

・療養補償給付
・休業補償給付
・障害補償給付
・傷病補償年金
・遺族補償給付
・葬祭料

まとめ

損益相殺は損害賠償請求を行う上で重要な項目となります。もし間違った損益相殺をしてしまうと、本来受け取れる賠償金を受け取れない可能性もでてきてしまいます。

しかし、交通事故の被害者の方がそれぞれの賠償の対象となる項目を確認することは、あまりにも多くの時間と労力がかかってしまうため、弁護士に依頼して確認してもらうことがおすすめです。

弁護士に依頼することによって「損益相殺のアドバイス」「損益相殺となる対象の確認」「加害者側との示談交渉の代行」といったサポートを受けることが可能です。

損益相殺でお困りの方は、当サイトでご紹介している実績のある弁護士の無料相談を受けてみることをご検討ください。

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