損益相殺とは?損害賠償額からの控除項目と減額方法を解説

過失相殺、逸失利益と並んで、損害賠償額を計算するうえで、避けることができないものとして損益相殺があげられます。ごくごく簡単に言うと、損益相殺は、損害賠償額から減額されるものです。このため、被害者の方が受け取る損害賠償額に大きな影響を与えることになります。

当然のことながら、損害賠償額から損益相殺を控除する前に、対象とすべきものとするべきではないものを分ける必要があります。この点について例示するとともに、異なる損害賠償額が算出されてしまう、損益相殺に関する2つの計算方法について、どちらが支持されるべきか、説明したいと思います。

損益相殺(そんえきそうさい)とは?その定義

交通事故の被害者が、その交通事故を要因とする何らかの埋め合わせを得られた際には、これを損害賠償額から減額することになります。このことを損益相殺と呼んでいます。

それでは、損益相殺とはどのような考え方を持つものなのでしょうか。

損益相殺の考え方

実は、民法においては損益相殺についての規定がありません。つまり、損益相殺は、法律上で定められたものではない、ということになります。

別の言い方をすれば、加害者の負担と被害者の利益が公平でバランスの取れたものとなるように、慣習的に守られている法律的な考え方です。加害者が自らの過失の度合いによって賠償金を支払う一方、被害者は実質的な損害額だけを受け取るのが公正と言えます。

すなわち、被害者が損害分を超える、過剰な利益を得るのを防ぐのが、損益相殺の目的と言えるのです。

具体的には、どのようなケースで損益相殺が行われて、損害賠償額から減額されるのでしょうか。次に見てみましょう。

損害賠償額からの減額

控除すべき項目

損害賠償額から控除すべき対象を以下に記します。

  • 受け取り済みの自賠責保険金
  • 受け取り済みの政府保証事業によるてん補金
  • 労災保険法に基づく給付金
  • 国民年金法に基づく給付金
  • 国家公務員災害補償法に基づく給付金
  • 地方公務員等共済組合法に基づく給付金
  • 受け取り済みの所得補償保険金

控除しない項目

損害賠償額から控除しないものを以下に記します。

  • 香典
  • 見舞金
  • 生命保険金(けが・入院給付金)
  • 搭乗者傷害保険金
  • 生活保護法による給付金
  • 労災保険法第23条に基づく支給金(特別支給金、特別年金休業特別支給金、遺族特別支給金、遺族特別年金など)
  • 未給付の社会保険給付金(労災、厚生年金、共済年金など)
  • 養育費
  • 税金

以上、損益相殺の対象となる項目を書き出してみましたが、この中にあるものも含めて、損益相殺の対象とするべきかどうかの論争は存在します。そうした論点を次に見ていきましょう。

減額することについて論争がある項目

生活費

死亡事故で死亡した被害者が、生存していたら支出していたはずの生活費を、損害賠償額からの減額、つまり損益相殺とするべきかどうかが問題となります。難解な法律上の話はともかく、実務上では、イコール損益相殺と言うよりも、生存していたら将来得られたはずの「逸失利益」の算定において控除されるという考え方が自然です。

養育費

幼児が死亡した際には、養育費が損益相殺に当たるかどうかが問題になります。つまり、幼児が生存していれば、当然ながら養育費がかかります。しかし、死亡すれば養育費の支出をしなくなります。このため、養育費を損益相殺の対象とするかどうかについて、かねてから論争がありました。

この点について、最高裁は2度にわたり、養育費は損益相殺の対象には当たらない旨の判決を出しています(昭和39年6月24日、昭和53年10月20日)。

このうち、昭和53年の判決は、損益相殺への直接的な言及というよりも、「幼児の逸失利益の算定においては、養育費を控除すべきではない」旨の内容でした。

それでは、損益相殺を含めた損害賠償額の算定はどのように行うべきなのでしょうか。

損害賠償額からの減額方法は?過失相殺の先か後か

損益相殺を損害賠償額から減額するには2つの方法があります。

一つは、過失相殺の後で損益相殺を減額する方法です。つまり、最初に被害者の損害額を算出したうえで、過失相殺を適用し、その後、損益相殺の対象を減額するものです。

もう一つが、過失相殺の前に損益相殺を減額する方法です。つまり、損害額から損益相殺の対象を減額し、それから過失相殺を適用します。

仮に被害者の過失割合が2割(20%)とするならば、以下のようなそれぞれの算定式が導かれます。

過失相殺の後
総賠償額×(1―0.2)-損益相殺対象項目=損害賠償額

過失相殺の前
(総賠償額―損益相殺対象項目)×(1―0.2)=損害賠償額

問題となるのは、同じ数字・係数を使ったとしても、2つの計算方法では、算出される損害賠償額が異なってしまうということです。

平成元年4月11日の最高裁判決では、過失相殺をした後の損害額から損益相殺の対象を控除する方法を支持する考えが示されました。つまり、優勢となった考え方を算定式で表すならば、すでに記した通り以下の式となります。

過失相殺の後
総賠償額×(1―0.2)-損益相殺対象項目=損害賠償額

まとめ

損益相殺について説明してきましたが、損益相殺の対象となっている項目であっても、慣習上あるいは実務上において、こまごまとした取り決めがあります。このように、それぞれの事案ごとに、法律の専門家が判断する必要に迫られるケースがほとんどです。そのため、損益相殺を含めた損害賠償額の算定については、交通事故を専門とする弁護士に相談することをおすすめします。

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